タルボサウルスはアジア最大最強の肉食恐竜です。
タルボサウルスはアジア最大最強の肉食恐竜です。
Tarbosaurus bataar(タルボサウルス・バタール)の意味は古代ギリシャ語の「[τάρβος]/tarbos; 恐怖・畏怖・崇拝」「トカゲ」とモンゴル語の「[баатар] baatar;英雄」です。意訳すれば「恐怖を抱かせる英雄トカゲ」です。
ここに展示している標本はソ連モンゴル共同調査の際発掘されたタルボサウルスをもとにしています。現在ロシア科学アカデミーに所蔵されています。
タルボサウルスが産出するネメグト層は白亜紀末の堆積物で、モンゴルから中国にかけて露出しています。恐竜のほかにも魚の骨や軟体動物の化石、カメなども見つかっていることから、常に川の流れがあるような場所だったと言われています。ティラノサウルスに比べるとやや小さいことも分かっていますが、それでも当時のモンゴルでは最大の捕食者でした。
真正面からみるとしっかりこちらを見ていることが分かります。しかしティラノサウルスに比べるとやや顔が細いとも言えます。
タルボサウルスはティラノサウルスに比べて、腕や手の甲の骨が小さくなっており、より「退化」しています。
頭骨は上顎全体の強度がティラノサウルスよりも上がっていることも分かっています。これはネメグト層から産出する竜脚類「ネメグトサウルス」などの大きな獲物の存在が影響していたと考えられています。
羽毛はあったのか
中国遼寧省前期白亜紀(1億2500万年前)の地層で発見されたティラノサウルスの仲間のユウティランヌスは羽毛がありました。ユウティランヌスは全長9mの大型の獣脚類です。当時の遼寧省は平均気温10度と寒冷な場所で、保温のために羽毛がとくに発達したと考えられています。
それまで小型の羽毛恐竜しか見つかっておらず、大型の恐竜では体格が大きいと羽毛がないのではないか、という議論もありましたが、この発見で大型の肉食恐竜であっても羽毛が生えていたということがこれ明らかとなりました。そのため、ティラノサウルスの仲間であるタルボサウルスにも羽毛があった可能性があるといえます。
恐竜センター3階の展示には遼寧省の小型羽毛恐竜と鳥類への進化の展示を展示しています。
次のページでは恐竜化石の盗掘をテーマにした話です。苦手な人はここまで。