恐竜化石をめぐる人間のエゴ~盗掘~(大人向け)
モンゴルでは化石の盗掘が非常に問題となっており、モンゴルの法律で恐竜化石の輸出は禁止となっています。実はそれまでモンゴルは恐竜化石の持ち出しにはあまり関心がなかったのです。それが変わるきっかけとなったのが2012年ニューヨークのオークションに出展された「英国産」のタルボサウルスです。これにぎりぎりで気が付いた複数の古生物学者と大臣の説得で事の重大性を理解したモンゴル大統領の異議申し立てました。
調査と裁判の後、オークションに出品した業者が有罪判決を受ける結果となり、2015年ようやくモンゴルへと返還されました。これをきっかけに様々なモンゴルから違法に持ち出された化石の返還が進みました。恐竜博2019で展示されたデイノケイルスも頭骨が違法に持ち出されていたものです。こういった取り組みがなければ、未知の恐竜の全貌は分からず、闇に葬り去られていたでしょう。
モンゴルの恐竜化石はモンゴルだけではなく全人類の宝です。
盗掘された化石は詳細な産出地、産状、層準など研究に必要な情報がすべてなくなっているため、研究することが非常に困難です。また、私的コレクションに埋没することで、その間の標本の研究はストップします。記録があれば再調査することも可能ですが、往々にしてそういった情報の記録はコレクターの忘却や死亡により失われます。
この問題は「本物の恐竜化石を買わない」ことで防ぐことができます。
上記参考文献;「米へ密輸された恐竜の化石、波乱の末モンゴルに返還」-CNN
「ハリウッドのセレブが恐竜の化石を買いあさるために古生物研究が進まない」と学者が規制を要求 - GIGAZINE
追記;2020年10月、オークションでティラノサウルス・レックスの「スタン」が33億円、アロサウルスが3億8000万円という高額取引がなされました。今後、この二体の恐竜の研究ができるのか、また恐竜が高額で売れることが広まることで偽物の化石や盗品が増えないか心配です。 33億円で落札のティラノ全身化石、今後の研究に懸念も(ナショナルジオグラフィック)